EDの種類EDの種類

医学上、EDにはその原因などのそれぞれの罹患状況により、いくつかの種類に分類されます。ですので、一概にEDとひとくくりにしてはならない理由もそこにあり、人それぞれ、種類別に最適な治療方法があるのです。ではひとつずつ見ていきましょう。

機能性要因

EDで相談がもっとも多いのが、このタイプです。

機能性要因

機能性勃起不全は別名、心因性勃起不全と言われるもので、個人の何らかの心理的な影響によって勃起不全が起こっている状態を言います。つまり解剖学的に言えば勃起をすること自体に身体的な障壁はまったくありません。身体に原因があるのではなく、心にEDの原因があるのが機能性EDに分類されます。
原因となる出来事に対して、なんとなく心当たりはあるものの、いままで普通に勃起していたものが急に起たなくなるわけですからそのショックは大きく、多くの人が惑いを隠せません。悩みに悩んで、自分ではどうしようもなくなって医師に相談する方も多く、潜在的に機能性EDを抱えた人は実数以上に多いかもしれません。

問題は人それぞれ。解決方法も多岐に渡ります。

治療に関してですが、この種のEDは精神的な理由によるものなので、その原因となった出来事や気持ちの面をケアする必要がでてきます。夫婦の気持ちのズレ、子作りのプレッシャー、緊張、仕事や家庭でのストレス、過去の性交の失敗を引きずる、長い間セックスしてこなかったなど、問題はひとそれぞれ、解決方法も杓子定規というわけにはいきません。そのほか、たとえば自分で自慰すれば勃起するものの、相手がいると萎えてしまうとか、コンドームをつけると起たないとか、そういったケースもあります。
この手のEDが厄介なのは、よく言われるED治療薬で何とかなるものでもないという点です。つまり、効く場合もあれば、効かない場合もある。仮に効いたとしてもそれは一時的なもので、根本的な心理的原因を解決しないことには本当の意味で治療に成功したことにはなりません。

パートナーと一緒に解決することが改善の近道です。

重要なのは機能性EDの治療にふさわしい環境を、本人の周りに作ることです。それはつまり、正しい知識と理解を得たパートナーと一緒に治療を受けることですね。まれに、本人ではなくパートナーの方が、ED治療薬を飲ませたいと医師のところに相談しに行くですとか、自ら薬を購入するなどのケースもあるようです。それはEDに対する無理解の典型例のようなものです。EDの原因がもし心因性のものであれば薬を飲ませてもあまり意味がないわけですから、いかに正しい理解と、一緒に解決することが重要なのかお分かりいただけると思います。

器質性要因

病気やケガ、薬の副作用が原因のケースです。

器質性の勃起不全はいわゆる身体機能になんらかの異常や障害があり、そのため勃起することができないEDに分類されます。器質性とひとくくりにされていますが、細かく分けると陰茎性、神経性、中枢神経、脊髄神経、末梢神経、血管性、内分泌性、その他と複数の種類に分かれます。原因はさまざまですが、とりわけ手術や外傷によって神経に障害を受けるケース、他の病気によって血管や血流に障害が起き、EDになってしまうケース、薬剤が原因のケースなど、直接身体に何らかの影響を与える出来事がきっかけになって、器質性勃起不全に至るケースがほとんどです。
具体的に言えば、頭部、脊髄、骨盤などの手術または受傷による神経機能の低下または欠損などが原因となるケース、抗鬱剤や抗コリン薬、抗アンドロゲン薬、喫煙過多などの薬の副作用や化学物質が原因となるケースです。

バイアグラなどの勃起改善薬が効かない場合も!?

器質性勃起不全における勃起の程度はまちまちです。ある程度勃起を確保でき、射精が可能な方もいらっしゃいます。しかしながら、勃起にかかわる神経の損傷が原因となる場合、その回復は非常に困難であると言われています。この場合、バイアグラなど勃起改善を促す薬を処方しても、その効き目がないからです。交通事故によって、脊髄から性器につながる神経を損傷し、歩いたり運動したりといった日常生活をおくるには影響はないものの、勃起だけができないという方も現実にはいます。
神経が傷つくとその修復は非常に困難ですし、ペニスの中のどの神経がどのような損傷を受けているかを診断することでさえ現代医療では難しいとされていますので、器質性EDの中でもこの手のケースは治療がもっとも難しい部類と考えていいかもしれません。

EDそのものではなく、根本原因の治療が最優先です。

慢性疾患はEDの間接的な要因となっている場合、血流が問題となるようです。たとえば、高血圧の場合、血管にストレスが増し、それによって血管が損傷、その部分が固くなることで、ペニスに送られる血液量が少なくなるためEDになりやすいと言われていますし、糖尿の場合は血管や神経の圧迫で血管が固くなりますが、性的刺激を受けたとしても十分な血流が得られず、同じくEDになるケースが多いようです。ただこれらのケースは器質性勃起不全とひとくくりにするよりは、混合性勃起不全として認知されることが多いです。
器質性勃起不全の場合、EDそのものの治療も大切ですが、性質上、その根本原因の治療が先行して行われる必要があるかもしれません。

混合性要因

複数の要因が絡み、原因の特定が困難です。

混合性勃起不全とは、機能性勃起不全と器質性勃起不全が混在している状態で、複数の要因が絡み合って勃起不全という結果をもたらしているので、原因を特定することが困難な勃起不全です。糖尿病や心疾患、末端血管障害、高血圧、肝機能障害、腎機能障害などの慢性疾患が間接的な原因となり、それに心因性のきっかけが重なって混合性勃起不全となります。

思い込みで勃起不全になることも!?

腎機能障害においては、人工透析における不均衡症候群=倦怠感や頭痛、下肢がつるなどの症状でストレスを受ける、または腎不全の影響を受け、男性ホルモンの一種であり、性ホルモンとしての作用があるテストステロンの分泌量が少なくなることで、心因性、器質性の両方の勃起不全の要素を満たしています。糖尿病では症状の進行が進むと、末梢神経に悪い影響が及ぶため勃起に必要となる一酸化窒素が神経からでなくなり、勃起不全を引きおこすと言われています。
ちなみに糖尿病になったからと言って誰もが勃起不全となるわけではありません。ただ、そういった言われ方を世間ではされているので、そのことを知ったときに自分の気持ち次第では心因性の勃起不全を引き起こす可能性があります。つまり、思い込みで本当に病気になってしまうのです。
頻尿や、残尿感、射精痛、下腹部の不快感などが代表的な症状となる、慢性的な前立腺炎などの泌尿器疾患もそのツラから勃起不全を引き起こすと言われています。つまり器質性の要因が、心因的な要因と重なり、混合的な勃起不全を引き起こすきっかけとなるのです。
事故によるショックやストレスが原因のうつ病なども、ホルモンバランスを崩し、内分泌機能障害などにより、勃起に必要な要素が奪われることで心因性と器質性の要素を併せ持つ勃起不全となり得ます。

混合性要因

諦めずに医師に相談しましょう。

こうした、個々人で要因が異なりまた病気によっても複雑な事情を伴う混合性勃起不全は、個人で問題を抱え得やすく、悶々としながら日常生活を送るケースが多いといえます。EDを診察する医師によれば、混合性のEDに悩んでいる人は意外に多く、またどうせ改善されないだろうと考えて半ばあきらめている人も多いようです。年齢が年齢だしと言ってあきらめたり、恥ずかしいからと言って殻に閉じこもったりしていては、治療できるものも治療できませんから、まずは気軽に医師に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

薬剤性要因

病気の治療薬が勃起不全の原因に!?

勃起にかかわる神経や血管、分泌されるホルモンは実にさまざまなものがあり、その機能を支えていると言えます。つまりそれだけリスクが高く、病気の治療のための投薬も、マイナス要因となることが知られています。つまり、副作用として勃起不全が起こり得えるわけで、そうした薬が原因の勃起不全を薬剤性勃起不全と呼びます。日本では薬剤性の勃起不全となる人の割合は、全体の6%と少ないのですが、アメリカでは25%と高い割合で薬剤性勃起不全となっている人が多いことがわかります。

EDの原因となる薬剤はつぎのとおりです。

中枢神経系薬剤 市販の風邪薬などに含まれる薬剤も中枢神経系に作用する薬剤なので、乱用には注意が必要です。
→解熱剤、消炎鎮痛剤、抗けいれん薬、抗不安剤、抗うつ薬、向精神薬(睡眠薬も含む)
末梢神経系薬剤 脳と脊髄以外のすべての神経要素からなり、中枢神経系と他の身体の器官をつなぐのが末梢神経です。刺激や興奮を伝道する部分にアプローチする薬剤と言えます。
→筋弛緩剤、鎮けい薬、麻酔薬、抗コリン剤
循環器系薬剤 液やリンパ液などの体液を体内で輸送し循環させる働きをつかさどるのが循環器です。この種の薬剤は血液やリンパ液などを正常に作用させるための薬剤群です。
→不整脈治療薬、利尿剤、降圧剤、血管拡張剤、高脂血症用剤
消化器系薬剤 取り込んだ食物を貯蔵し、消化した栄養素の吸収や消化できなかったものの排泄、運搬を行うのが消化器で、これらの疾患などに使われるのが消化器系の薬剤です。
→消化性潰瘍治療薬、麻酔薬、抗コリン薬、鎮けい薬

高血圧治療の降圧剤が原因の可能性も!?

ちなみどういった薬剤が勃起不全を起こしやすいのでしょうか。薬剤性勃起不全が起こりやすい薬剤の一つに、高血圧などの治療に使われる降圧剤があります。発症率の高い薬剤から順に上げると下記のようになります。

薬剤名 発症率
メチルドバ(中枢性α2アゴニスト)製剤 14~36%
レセルビン(ラウオルフィア)製剤 1~33%
スピロノラクトン(カリウム保持性利尿薬)製剤 4~30%
塩酸プロプラノロール(β-アドレナリン受容体遮断薬)製剤剤 2~15%

※使用量の増加に伴い発症率も高くなる傾向有り

このように、薬剤によっては3人に一人が発症する高い確率となっています。

薬剤により、性欲の減退や射精障害も!?

薬剤による勃起不全は大きく分けて3種類、薬剤の摂取・投与による勃起不全、性欲の減退、そしてもう一つは射精障害です。射精障害とはなかなか射精できなかったり、勃起はするもののオーガズムに達しなかったりするケースのことを言います。実感しやすいのが、風邪をひいて風邪薬を飲んだ後、しばらくは性的な欲求が起こらないというケース。あれは身体の弱化とともに、薬剤の影響もあることを忘れてはなりません。

その他要因(リスクファクター)

生活習慣や身体の衰えが原因となります。

EDには機能性勃起不全、器質性勃起不全、混合性勃起不全、薬剤性勃起不全という4つの主な原因のほか、勃起不全のリスク要因があります。それは生活習慣の影響もあれば、単純に身体の衰えの影響もあります。そうしたリスク要因を理解していることで、少しでもEDになるリスクを減らすことができますし、現状EDとなっている方も、それらの要因をなくす努力ができ、正常な勃起を取り戻すことができる可能性が出てきます。

リスク要因1:加齢

EDのリスクファクターとして最初に挙げなければならないもの、それは加齢です。
データの上でも実証されており、年齢が上がれば上がるほど、ED罹患率は上昇しています。日本人の70代男性の71%がEDであることからもその割合が大きいことが理解できるでしょう。残念ながら老いは誰にでもやってくるもので、抗えません。とはいえ加齢が直接の原因ではない可能性も高く、その年齢になるまで健康的な生活を送り(性活も)病気をせず過ごしていれば、EDになるリスクは少なくなりますから、そうした努力をしていくことも重要でしょう。

リスク要因2:喫煙

これも大きな要因となります。なぜかというと、タバコの成分が血流に大きな影響を及ぼすからで、血管内皮障害を引き起こすことは良く知られています。そうした直接的なリスクと、喫煙が冠動脈疾患や脳血管障害を間接的にもたらすものなので、喫煙しないに越したことはありません。

リスク要因3:糖尿病

糖尿病に罹患していない人の3倍の発症リスクがあります。器質性勃起不全になる可能性が高く、それが糖尿病の初期症状を示すケースも。自律神経障害、陰茎の血管と海綿体の内皮細胞の障害などがこの種のEDを引き起こします。

リスク要因4:高血圧

降圧剤による副作用でEDになる人が多く、その点も注意が必要ですが、高血圧患者の多くがそれ以前にEDを自覚しているケースも多いようです。高血圧によるEDの発症原因とは、陰茎血管や海綿体の構造変化と内皮の障害が原因となります。

リスク要因5:肥満

BMI値が高いほど、男性ホルモンの低下がみられることから肥満とEDの相関性が疑われています。肥満な人ほど、生活習慣病などが原因となる血管に対する障害リスクが大きく、とりわけ動脈硬化はEDに大きな影響を与えます。勃起に必要な血液量を陰茎に送り出すことができないからです。

リスク要因6:新婚性勃起不全

多くが心因性のEDと考えられており、結婚に伴うストレス、環境変化、性交経験の未熟、性交に対する無知、過去の失敗、コンプレックスなどが主な要因です。見合い結婚している方のほうが発症率が高く、またそのうち結婚まで童貞だった男性がかなりの数を占めると言われています。新婚性勃起不全は離婚や別居の原因となることも多いため、看過できない問題と言えるでしょう。

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